昔話はお好きでしょうか。私は仕事柄、日本昔話のアニメを見たりすることがあります。また、桃太郎や浦島太郎と言った昔話を授業で扱うこともあります。
以前も書いたように思いますが、こうした昔話は現代に移るにつれ表現が柔らかくなっていると言います。
例えば、桃太郎は桃を食べて若返ったおじいさんとおばあさんの間に生まれた子どもで、鬼を殺したという表現から、川で拾った桃から生まれた桃太郎が鬼を懲らしめる表現に変わりました。
浦島太郎は最後にお爺さんになった後、鶴に変身して飛んで去っていくというエンドがあったそうですが、いつのまにか無くなった、など。
時代に合わせた物語になっています。本日は、そうした昔話が、もし現代に生まれたらどんな話になるかというテーマで書かれた小説を紹介します。
タイトル:むかしのはなし
著者:三浦しをん
三カ月後に隕石がぶつかって地球が滅亡し、抽選で選ばれた人だけが脱出ロケットに乗れると決まったとき、人はヤケになって暴行や殺人に走るだろうか。それともモモちゃんのように「死ぬことは、生まれたときから決まってたじゃないか」と諦観できるだろうか。今「昔話」が生まれるとしたら、をテーマに直木賞作家が描く衝撃の本格小説集!!出典:Amazon
評価:★★★★☆
レビュー:
昔話を現代風にアレンジしたという表現が正しいのか、一見すると全く関係なくなっているようでも要素要素で昔話が残っている短編集。と見せかけた連続する物語構成です。
この時点でこの小説の複雑さが窺えます。
昔話と言うと勧善懲悪とか正しいものが救われる世界観、教訓があります。しかし、現代はどちらかというと正直者が馬鹿を見る社会かも知れません。そうした、教訓めいた昔話を現代にアレンジすると、なるほどこうなるのか、と感心する話もありました。
地球最後の日に何をするか、助かるために動くのか、あきらめるのか。たまに寝る前に考えてしまうようなテーマを扱っています。そこに、かぐや姫や浦島太郎という昔話が入ってきます。
昔話を現代風に書き換えるだけでも面白いのに、一貫したストーリーが面白い。昔話も好きな方、地球最後に何をするか考えたことがある方におすすめの1冊です。
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