通っていた高校に大きなゲルニカのレプリカが飾られていました。
当時は特に気に留めていませんでしたが、今日ご紹介する本を書店で見つけたときにふと記憶が甦りました。
タイトル:暗幕のゲルニカ
著者:原田マハ
ニューヨーク、国連本部。イラク攻撃を宣言する米国務長官の背後から、「ゲルニカ」のタペストリーが消えた。MoMAのキュレーター八神瑤子はピカソの名画を巡る陰謀に巻き込まれていく。故国スペイン内戦下に創造した衝撃作に、世紀の画家は何を託したか。ピカソの恋人で写真家のドラ・マールが生きた過去と、瑤子が生きる現代との交錯の中で辿り着く一つの真実。怒濤のアートサスペンス!
出典:Amazon
評価:★★★★★
レビュー:
以前、『旅屋おかえり』という書籍を読みました。それで、原田マハという作家を知り、もう1冊読んでみたいと思って手に取りました。
『旅屋おかえり』は、ほのぼの系だったので、本作もそういった期待をしながら読み始めました。しかし、全くほのぼの系ではなく、
「芸術は戦争に訴える力があるか」という自分にとっては急なテーマでした。
作者は元美術関係の仕事をされていたそうで、どうやらこっちが真骨頂のようです。
ストーリー展開は、現代でピカソの『ゲルニカ』を追いかける研究者と、ピカソがゲルニカを描いた当時の背景やその後のスペインの話とを交互に進めていきます。
こうした構成は小説でよく見かけます。大半は最後に時代がリンクして、一つの繋がりを見せますが、本作は「時代」がリンクせず、「モノ」がリンクします。そこに小さな感動がありました。
芸術関係も世界史も詳しくないので、史実かどうかも分からず純粋に小説として読みました。
表現力として、恩田陸の『蜜蜂と遠雷』のように、とにかく芸術を言葉で表現することが上手だと感じました。
それだけの知識や感受性が無いとできないだろうし、それをまた文章で表現できる力も必要になります。良く言う1秒を1時間のように表現する小説家もいれば、1枚の絵でよくここまで表現できるなと感じさせる小説でした。
絵が政治に使われるというのは不思議にも感じました。「ただの絵じゃん」とも思いますが、中国三国志時代の玉璽のように持っているだけで権力者になれるという感覚がよく理解できません。もう少し、こうした芸術系の本も読んでみたいです。
勉強にもなる小説でした。
表現力という観点からも、おすすめの1冊です。
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