ミステリ好きでミステリばかりを集めて読んでいますが、たまにミステリ以外に手を出すことがあります。特にこのジャンル、というのはありませんが、気付けばヒューマンドラマが多くなっています。
ファンタジーやSFは比較的少ないかもしれません。「成長」を扱った物語は好きです。現実世界でも起こりそうな物語を小説にした作品が好きなのかもしれません。小説くらいは現実世界から離れて、どっぷりファンタジーの世界に浸ればいいものの。
今日は子供に関連する現実世界でありそうな小説を紹介します。
タイトル:朝が来る
著者:辻村深月
第147回直木賞、第15回本屋大賞の受賞作家が到達した新境地!
長く辛い不妊治療の末、栗原清和・佐都子夫婦は、民間団体の仲介で男の子を授かる。朝斗と名づけた我が子はやがて幼稚園に通うまでに成長し、家族は平穏な日々を過ごしていた。そんなある日、夫妻のもとに電話が。それは、息子となった朝斗を「返してほしい」というものだった――。
自分たちの子供を産めずに、特別養子縁組という手段を選んだ夫婦。
中学生で妊娠し、断腸の思いで子供を手放すことになった幼い母。
それぞれの葛藤、人生を丹念に描いた、胸に迫る長編。出典:Amazon
評価:★★★★★
レビュー:
物語は紹介文に書かれている通りです。
養子として迎え、我が子のように育ててきた子どもの本当の母親が夫婦の前に現れ、「子どもを返してほしい」と言い始めます。
本当の母親は、中学生で妊娠し、出産。子どもを育てることは難しいと考えた末に養子に出しますが、大人になって、やっぱり子どもに会いたいと考え始めます。
一方、養子を組んだ夫婦は長く不妊治療で子どもが授かれなかったために、養子で迎えた子どもを本当の子のように育て始めます。
この子どもにとっては、どちらが親なのか。子どもの幸せを考えると経済的に安定している夫婦だ、とか、子どもは本当の母親の下で育てられたほうが幸せだ、と両者の意見が飛び交います。
生みの親の生涯が語られる本作では、どちらかというとそちらに焦点が当たっているように思います。なぜ、養子に出さなければならなかったのか。なぜ、中学生で妊娠してしまったのか。なぜ、子どもを迎えに来たのか。
育ての親か生みの親か、という議論は漫画やドラマ、映画でもよく出てくるテーマのように思います。本作はこれがメインテーマというわけではありませんが、子どもを巡る両者の葛藤がどちらも感情移入できるように丁寧に描かれています。
養子を組んだ側の葛藤、養子に出した側の葛藤、こうしたヒューマンドラマに興味がある方におすすめです。
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