罪を犯した人間が、出所後に新しい人生を歩もうとします。
再犯しないように静かに暮らそうとしますが、自身の性格からそううまくはいかない。
犯罪はもちろん悪いことです。
罪を償った人の生きる世界を描いた作品。何とも言えない気持ちになりました。
本日はそんな作品をレビューしたいと思います。
タイトル:身分帳
著者:佐木隆三
映画監督西川美和が惚れ込んで映画化権を取得した、
『復讐するは我にあり』で知られる佐木隆三渾身の人間ドラマ!
映画『すばらしき世界』(2021年2月公開)原案。
復刊にあたって、西川美和監督が書き下ろした解説を収録。人生の大半を獄中で過ごした前科10犯の男が、極寒の刑務所から満期で出所した。
身寄りのない無骨者が、人生を再スタートしようと東京に出て、職探しを始めるが、
世間のルールに従うことができず、衝突と挫折の連続に戸惑う。刑務所から出て歩き始めた自由な世界は、地獄か、あるいは。
伊藤整賞を受賞した傑作ノンフィクション・ノベル。出典:Amazon
評価:★★★★☆
レビュー:
殺人の罪などで収監されていて、出所してから生活保護を受け生活していく男の話でした。
なんと、概要にも書かれていますがノンフィクションだから驚きです。
また、そのせいもあってかリアリティがあり、ゆっくりと進む話ではありますが徐々に感情移入していきます。
気付けば主人公である男に無事に静かに暮らしてほしいと感じるようになりました。
主人公自身は切れやすく、すぐに手が出てしまうが本人はもう罪を犯さないように人生をやり直したいと思っています。
ストーリー展開からも、そうした本心からやり直しをしたいと考えているようになっていると感じられますが、時々急に声を荒げたり、脅したりする描写があり、また罪を犯さないかどきどきします。
感情移入し過ぎてしまうと、もう続きが読みたくなくなります。
このまま少しずつ周りに信頼され、支援され、いい人生を送って行って欲しいと思うようになります。その中で、トラブルに巻き込まれたり、相手の些細な一言で声を荒げたり、切れたりする展開を考えると怖くなります。
このあたり、フィクションとノンフィクションの差が出てきて非常に面白い作品でした。
しかし、話は急に終わります。本当に急に終わります。その理由は、文庫本の解説まで読まないと分かりません。
この点もまたノンフィクションだからこそ、という感じでしょうか。
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