タイトル:星間商事株式会社社史編纂室
著者:三浦しをん
概要:
川田幸代29歳は社史編纂室勤務。姿が見えない幽霊部長、遅刻常習犯の本間課長、ダイナマイトボディの後輩みっこちゃん、「ヤリチン先輩」矢田がそのメンバー。ゆるゆるの職場でそれなりに働き、幸代は仲間と趣味(同人誌製作・販売)に没頭するはずだった。しかし、彼らは社の秘密に気づいてしまった。仕事が風雲急を告げる一方、友情も恋愛も五里霧中に。決断の時が迫る。
出典:Amazon
評価:★★★★★
レビュー:
ジャケット買いならぬ、作家買いをしました。三浦しをんは『船を編む』ではまり、全作読破した好きな作家の一人です。本全体が温かい印象があり、安心して読めます。
さて、本作は社史編集と同人誌という組み合わせで、会社の黒歴史を探っていく一人の女性が主人公の一人称視点で進む物語です。
一人称視点の作品は多く、セリフじゃない説明文、いわゆる地の文も会話口調になっている書き方です。この場合、主人公が知らない事実は読者も知らないし、主人公以外の人の考えていることは当然分からないと言う特徴があります。
では、どうやって日記から物語に昇華させるかと言うと、それが三浦しをんの上手なところだと思います。他のキャラクターの些細な動きから、小さい感情を読み取ったり、実際は1秒にも満たない行動を1分かけて読者に読ませたりして物語を展開させています。
こうした心理描写が非常に上手だと思います。
本作は推理物とかミステリー作品と呼ばれるものではありません。ミステリー作品なら小説の中のヒントから読者が犯人に辿り着けるように描かれていますが、本作品は会社の黒歴史の内容を探っていくというものです。つまり、何でもありな展開にできるわけです。
しかし、しっかりと黒歴史が明らかになるまでの展開があり、どきどきする内容でした。ミステリーは集中して読まないと置いて行かれることもありますが、本作のような推理の仕様がない作品はある意味でぼーっと読めるので良かったです。
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