聞き手が見えていないものを言葉だけで聞き手に伝えると言うのは難しいです。
特に小説における音楽など。
漫画で音楽系のものを読んでいると特にそう感じます。
例えば、BECKやBLUE GIANTと言った「天才的な」音楽の才能を持つキャラクターを中心に据えた漫画でそれを表現できると言うのは感心します。
天才的な歌唱力を持つひ弱な少年がちょっと怖そうな人たちとバンドを組む漫画
努力家で天才的な表現力を持つサックス奏者がジャズの世界で進んでいく漫画
こういった漫画は「どんな音楽なんだろう」と読者に想像させることでそれぞれの「天才的な音楽の才能」を成り立たせていますが、これがアニメや実写映画化した時にその音楽が”現実”になってしまいます。非常にチャレンジングな映像化だと思います。
さて、前置きが長くなりましたが今日は映画化も話題になったこちらの作品をレビューしたいと思います。
タイトル:蜜蜂と遠雷
著者:恩田陸
近年その覇者が音楽界の寵児となる芳ヶ江国際ピアノコンクール。自宅に楽器を持たない少年・風間塵16歳。かつて天才少女としてデビューしながら突然の母の死以来、弾けなくなった栄伝亜夜20歳。楽器店勤務のサラリーマン・高島明石28歳。完璧な技術と音楽性の優勝候補マサル19歳。天才たちによる、競争という名の自らとの闘い。その火蓋が切られた。
出典:Amazon
評価:★★★★★
レビュー:
私はとにかく長編の小説が好きです。
どっぷりとその世界観に浸れるからです。特に何巻も続いているものを読み始めるときのわくわくは計り知れません。
この作品も文庫本では上下巻となる長編です。
そして、直木賞受賞作。
前置きで述べたように、本作で登場するのはピアノの天才演奏者。
章の話し手が替わるタイプの話で、ずっと一つのピアノコンクールを予選から本選までを描くストーリーです。一貫しているので非常に分かりやすい。
ピアノやクラシックに関して何も知識が無くても、その曲やコンテスタントがどう凄いのか、どんな印象を受けるのかを描くのが上手だなと感じました。
実際にその曲を聴きながら読んでみたいと思いました。
上巻は中心的な主人公が3人と、その他にしっかりと背景を描かれる人が1人いて、本当に誰が優勝するか分かりません。誰が優勝しても良いと思えるほどそれぞれ魅力があります。
この人が主人公、という表現が無いため自分の推しを作れるワクワクドキドキの作品です。
いつも犯人が誰か探しながら読むミステリーファンの方に、誰が優勝するか、自分が好きな主人公は誰かと応援しながら読んでみてほしい作品でした。
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